自分と他人との境界線を持つ、とはどういうことでしょうか?
簡単にいうと、自分は自分、人は人と明確に意識することです。
一線を引く、というと、少しネガティブなイメージがあり、超えられない壁を作ってしまうかのように思えますが、ここでいう境界線は、ガチガチに硬くて融通の利かないものではありません。
よそよそしく、冷たく振舞うということでもありません。
人間関係で精神的な苦しみが出てきたら、自分と人との領域が重なり合ってちょっとつらくなっていないか、チェックしましょう。
あまりにも他人の感情、考えが気になってしまったり、自分の感情が犠牲になってしまっているにもかかわらず、何もいえずにそのままにしておく、などのことが、境界線がはっきりとしていない、と考えます。
対人関係で不安や緊張感がある場合は、自分と他人との健康的な境界線を持てていないことが多いのです。
これは、育った環境で、終始他人の顔色を伺わなくてはいけない状況であったり、親の感情が不安定だったりなどで、注意を常に外に向ける習慣がついてしまったことが主な原因のひとつでしょう。
子供の頃にはっきりした理由もなく頻繁に叱られると、何をしても自分が悪いかのような罪悪感が植えつけられてしまうこともあります。
すると、不必要なほど他人の反応が気になり、自分のことを考えるのが利己的であるかのような感覚にとらわれてしまいます。他人の感情や思考を無意識に探って、感じてしまい、気疲れしたり、大きく感情的に反応したりするのです。健康的で、当たり前の「自分の世話をしているだけ」の行為が、いけないことに思えてきたりします。
そして、常に他人の思惑に配慮しないと罪悪感にとらわれてしまいますから、なかなか変えることができないのです。
これは大変なジレンマです。このようなジレンマが続くと、神経が磨り減ってしまいます。
対処方法としては、セラピーなどでトラウマを解消し、苦しい感情・条件づけをリリースしていくと、自然に「自分」というものが見えてきて、自分と他人の境界線がはっきりしてきます。すると、ごく普通に自分をいたわることができるようになってきます。
健康的な自-他の境界線を持つのに役立つ考え方
1. 自分の心身の健康に配慮するのは、ごく当たり前のこと。罪悪感を持つ必要はない。むしろ、私たちは自分の心身をいたわる責任がある。
2. 自分をいたわることにより、心に余裕が生まれ、精神状態の安定につながっていく。そして、心に余裕がある時にこそ、真に人を助けることができる。
3. はっきり人に自分の意見や気持ちを言うことにより、人間関係がよりよくなることもある。
4. 自分の領域、他人の領域がはっきりしていることで、自分も他人も共に楽しみ、楽になる。他人の自由を喜ぶ心の余裕ができる。
5. 自分は自分、人は人、と考えると、嫉妬や人を過度にうらやむことが少なくなる。
6. 他人との関係が風通しのよいものとなり、お互いの感情依存を基にした窮屈な関係から抜けられる。
7. 他人に対する心配・気苦労は実際にその人のためになっているか、考えてみる。過度の心配は、されるほうもつらいことが多い。それよりも、心配をその人のための祈りや願いに変えたり、よくなっていくイメージを持ってあげると、精神的にも双方によい影響がある。
8. 境界線がはっきりしないと、人へも過度の期待をしがちで、その期待が裏切られて苦しむことも多い。人は人、と考えると、人から受ける好意が特別な贈り物のように感じられ、喜びが生まれる。
自分と他人との境界線があることが「悪」ではないことをよく理解する必要があります。
むしろ、自分にもスペースを与える、他人にもスペースを与える、という自分と他人への愛に基づいて境界線を持つ、と考えたらいいでしょう。
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