心・感情

無条件のポジティブなまなざし (Unconditional Positive Regard)

2018/09/02

Unconditional Positive Regard「無条件のポジティブなまなざし」とは

Unconditional Positive Regardとは、来談者中心療法の創始者、カール・ロジャースの中心的な概念です。「無条件の肯定的関心(配慮)」、などと訳されていますが、どうもこの訳語だと大変理論的な響きがあり、シンプルな概念が逆に複雑に聞こえ、意味が捉えにくい感があります。Regardは多くの意味を持ち、状況によりいろいろな訳語が出てくる単語ですが、ここでは少し詩的に、「無条件のポジティブなまなざし」としてみました。

来談者中心療法は、アメリカでは現在、特にメインで使われる療法ではありません。心の問題を解決するのに、もっと効果的な療法がたくさんあるからです。しかし、ロジャースの考えは、セラピストの基本的なあり方の指針と骨格として、今も広く受け入れられ、重視されているのです。

その核となるのがこの「無条件のポジティブなまなざし」です。つまり、クライアントを一個の人間として尊重し、受け入れるという肯定的で受容的なセラピストの態度が、クライアントの癒しと成長を促進するということです。

しかし、この言葉を取り上げた理由は、用語について説明したいからではありません。このような「受容のまなざし」「やさしく、愛のある視線」は、私たちが自分自身に向けるべきものでもあるということを強調したいからです。

「無条件のポジティブなまなざし」の重要性

子供の頃を考えてみましょう。子供は常に親の反応を見て育ちます。そして、その反応がポジティブなものであれば、受け入れられている、自分が自分であってよいのだ、という感覚が育ちます。それと同時に、「やさしい目で見てもらっている」と感じた時、心がゆるみ、安心感が培われます。それが人の精神的安定の基盤を作ります。

また、自分が受け入れられている、自分の身になって考えてくれていると感じればこそ、子供は学校の先生に悩みを打ち明けたり、自分の過ちを素直に認めたりできるでしょう。

この反対の状態は何でしょうか。それは、条件付きでしか認めない、冷たい視線です。受け入れられていないと感じると、私たちの心は凍りついてしまうものです。

自分に「無条件のポジティブなまなざし」を向ける

対人関係での問題の多くが、受け入れてもらえないことであり、私たちはやさしさを周りから求めています。それにもかかわらず、自分で自分に対して冷たい態度を取ってしまうことがあります。

その状態では、心が行き場を失ってしまいます。自分で自分を窒息させてしまいます。つらい時、まわりにサポートがない時、あたたかいまなざしで自分を見つめてあげましょう。

「無条件」というのは、どんな状態にあっても、自分自身を丸ごと受け入れるということです。「○○になったら受け入れてあげるよ」というのではありません。大きな包容力の中で、自分に起きていることを、「今は大変だけれど、きっと大丈夫になる」と信じ、長い目で見てあげるのです。そのようなとらえ方が、「無条件のポジティブなまなざし」です。

誰にでも分け隔てなく光を与える太陽のような、あたたかい目線です。そのまなざしがあるからこそ、太陽のもとで植物が育つように、心が癒され、成長していくのです。

逆にいくらまわりの人に恵まれていても、自分で自分をあたたかく見つめてあげられないのなら、本当の幸福感は得られません。自分自身が、あたたかさを隔てる盾となってしまうのです。いくら日が照っていても、洞窟の中では光の恩恵は受けられません。

無条件、といっても、善悪を忘れるという意味ではありません。表面だけを見たり、言動だけで裁くのではなく、人自身を見てあげるということです。もしなおすべきことがあるなら、まず自分を完全に受けとめることで、修正する意欲と気力が湧いてくるのです。

このような心の持ち方でいると、心がゆるみ、癒しが早く訪れます。

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羽鳥美香
羽鳥美香
カウンセリング心理学修士号、アメリカ、カリフォルニア州のサイコセラピスト(心理療法士)免許(MFT)を持つ。オンライン(スカイプ・メール)/電話をメインとしたセラピー、コンサルテーションを行っている。
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