パニック障害 (パニック発作) とは

パニック障害 (パニック発作) とは

「パニックになる」という言葉があります。どうしていいかわからない、頭の中が真っ白になる、考えられなくなる、といった状態です。人前で話さなければいけない時、面接やテストの前など、不安や緊張感、恐怖感に根ざした症状です。

パニック発作は、そうしたパニック感に比べるとはるかに深刻で、身体的な症状をともない、私たちの生活に大きな影響を与えるものです。ストレスを感じるような状況にありがちな緊張や不安反応とは異なります。パニック発作は、理由や警告なしに襲ってくる、当事者にとっては大変苦しい状態です。

パニック発作の症状は、恐怖と緊張に突然襲われるだけではなく、急な発汗や、心臓がドキドキして、鼓動が激しくなるなどの身体症状が含まれます。パニック発作時には、恐怖反応は状況と不釣合いなほど大きく、その状況事態は多くの場合、特に恐怖感をもたらすようなものではありません。

このようなパニック発作が長期間にわたって何度も繰り返されると、またパニック発作がおきるのではないかという絶え間ない恐怖感がつのり、日常生活が難しくなっていく可能性があります。

パニック発作は改善・解消できるものです。役立つ方法もご紹介していますので、ぜひ読み進めていってください。

パニック発作の症状

パニック発作の症状には以下のようなものがあります。

  • 呼吸困難
  • 強烈な恐怖感
  • 窒息するような感覚
  • めまいや気を失うような感覚
  • 胸の痛み
  • ふるえ
  • 発汗
  • 吐き気や腹痛
  • 手足のピリピリするような感じやしびれ
  • 悪寒やほてり
  • コントロールを失うのでは、または死ぬのではないかという恐怖感
  • 想像を絶するような恐ろしいことが起こるような予感、またそれを避けるすべがないという感覚
  • 逃げ出したいという衝動
  • 夢の中にいるような、現実感がなくなるような感覚

パニック発作は多くの場合10分から20分でピークに達しますが、それ以上に及ぶこともあります。

パニック発作は特別な状況が引き金となって起こることもあれば、まったく何の前触れもなく起こることもあります。社交の場でパニック発作を起こす場合には、社交不安のために起こると考えられます。

パニック発作の症状は、場合によっては心臓発作などの症状に似ることもあり、医師の診断が望まれます。甲状腺の異常や貧血症、薬の副作用などでも不安症状が出ることもありますので、注意が必要です。

パニック発作と関連のある症状

回避
パニック発作を誘発するように思える活動を避けるため、仕事や家庭生活が困難になることがあります。

予期不安
パニック発作が起きるのではないかと考えることによって起こる不安を指します。

広場恐怖症
無力感、困惑感や、追いつめられたように感じられる場所や状況への恐怖感。パニック発作を経験した後になりやすい症状で、発作が起こった場所や、公共の場所や混雑を避けるようになります。

閉所恐怖症
閉鎖空間に恐怖感を感じる症状です。

パニック発作時に役立つ方法

パニック発作があった時にできること、思い出すとよいことをご紹介します。

1. 水をゆっくり、少しずつ飲んでみる

パニック発作が出ている時に、水を少しずつ、ゆっくり、ゆっくり飲むことで、楽になることがあります。飲む時に水が口に流れる感覚に注意を向けましょう。パニック発作時は、全神経・思考・感情がパニック感覚に集中しています。それを水を飲むことで、注意を他へ向けられるから効果があると考えられます。少しずつ飲むには、水をこぼさないよう、自然と飲む行為に注意がいくことになります。

2. パニック感を減少するのに、思い出すと役立つこと

(1) 死ぬかもしれないという恐怖感はあっても、この恐怖感のために死ぬことはない

パニック発作が起こっている時は、落ち着いて考える余裕がありません。恐怖感でいっぱいで、現実がゆがんで見えます。考えることもやはりゆがんでしまいます。しかし、パニック感のパワーに圧倒され、「死ぬかもしれない」と思った時に、すぐに、「そういうふうに感じているけど、死ぬことはない。パニック発作で死んだ人はいないのだ」という事実を思い出せれば、少し楽になってきます。

(2) 永遠に続くかのように思えても、パニック発作は必ず過ぎ去る

パニック発作が起こっている時は、時間がとても長く感じ、際限なくずっと続いていくような気がしますが、必ず過ぎ去ります。ほとんどの場合10分から20分程度です。長くても普通は1時間以内です。終わりのないパニック発作はありません。「パニック発作の状態は終わる」ということを思い出しましょう。

以上のようなことを自分に繰り返し言い聞かせましょう。もし状況が許すようでしたら、声に出して言うほうが効果的です。なぜなら考えを心の中で思っているだけではなく、自分の耳で聞けるからです。断固とした口調で言いましょう。弱々しい声でいわれるよりも、はっきりと言われた方が、誰でも耳を傾けますね。それと同じで、大きい声、断固とした口調の方が、自分の心に影響力があるのです。

恐怖感・不安に抵抗すればするほどパニック感が強まることがあります。感情の法則として、抵抗すればするほど心は反発します。しかし本当はどのような感情も、抵抗せず、引きとめようとしなければ、永遠にとどまるものではありません (しかし、多くの場合、無意識のうちに抵抗したり、引きとめようとしているので、少し心のワークが必要となります)。すごく長く続いたとしても1時間くらい、必ず終わるから大丈夫と開き直ると緊張感が少なくなり、実際には発作の時間が短時間で終わる可能性もあります。

3. 呼吸を使った不安をしずめる方法

人間には「戦うか逃げるか」というサバイバル本能による反応があります。危機に直面した際、体はすぐにそれに対処しようと、用意を整えます。パニック発作の状態は、実際に危険が迫っていないのに、いわばそのような体のアラーム機能が作動して、過剰反応してしまったような状況です。

その「戦うか逃げるか」という反応がなければ、パニックもなくなります。体がリラックスしている時、「戦うか逃げるか」という反応のスイッチもオフになります。というのは、リラックスしていながら「戦うか逃げるか」という全く正反対の反応を、体は同時に経験することは不可能だからです。

(1) 気分が落ち着いている時には、呼吸もスムーズでゆっくりしています。反対に気分が乱れている時は、呼吸が速く、苦しくなります。呼吸をゆっくりすることで、気分も少しずつ落ち着いてきます。

(2) 一番重要なのは、吐く息からはじめることです。まずしっかり、ゆっくり吐ききりましょう。これが基本です。吐ききれていないと、どれだけゆっくり呼吸をしようとしても、なかなか息をスムーズに吸えません。そうすると「深呼吸なんてできない」と思いやめてしまいがちです。

(3) 吸う時は少しずつ自然に吸います。一度にたくさん吸わないように注意してください。無理に深い呼吸をしようとする必要はありません。注意を向けるだけで深まります。

(4) 静かな、ゆっくりとした呼吸をすることで、過呼吸になるのを防ぐことができます。一呼吸するたびに、「ゆっくり、しっかり息を吐く」ということを頭に入れて、呼吸しましょう。吐く息ごとに「リラックス」と心の中で言うのも効果があります。

このような呼吸方法を毎日5分でも練習しておくと不安を軽減するのに役立ちます。パニック発作になってから、突然やろうと思ってもなかなかできません。腹式呼吸については腹式呼吸で気分を改善するをぜひ参照してみてください。

パニック障害とセラピー

パニック発作の症状はセラピーで改善・解消することができます。

パニックが起こる背景には、なんらかの慢性化したストレス、緊張感、プレッシャーが隠れています。特定の出来事が原因であるとはっきりわかる場合もあれば、長い間の度重なる緊張感が引き金となることもあります。また、もともと緊張感が強い方にパニック発作が起こりやすい可能性もあります。

この「もともと緊張感が強い」というのは、

  1. 性格的なパターンによるもの
  2. 子供の頃のトラウマ、家族からのプレッシャーなどによって、常に心に緊張感をかかえている状態が普通になっている

などのことが考えられます。

セラピー/心理療法では、この緊張感をとり、心が「戦うか逃げるか」モードから、リラックスした状態になるようにしていきます。

セッションでは、セラピストにもよりますが、通常、一つの療法だけを用いることはあまりありません。というのは、一つ一つの療法に長所と短所があるので、状況に応じて、最も適した方法を、随時行っていくのが効果的なのです。

セラピーでのパニック障害へのアプローチ

1. EFT

緊張感・不安感は身体の症状として大きく現れます。そこで、その症状を起こしているエネルギー/気の流れを整えようとするのが、エネルギー心理学と呼ばれるもので、代表的なものには、EFT(イモーショナル・フリーダム・テクニック)があり、大変即効性があります。これは単に「タッピング」と呼ばれることもあります。

例えば、人がまわりにたくさんいるという認識が不安を呼び起こす場合、もっともそれをよく表すフレーズに焦点を当てながら、それによる気の流れの阻害を、体のつぼを自分で叩くことで、この思考と心身の反応のリンクを解いていきます。一つのフレーズだけで完全に解消できるというよりも、その不安をいろいろな心理面から見て、思考と症状のリンクを崩していきます。

2. イメージ療法・イメージワーク

イメージ療法も大変効果的です。ここでの「イメージ」とは、心象、つまり心の中で描く、想像するイメージです。私たちの心はよくも悪くもイメージに大きく影響され、心の反応とイメージは連動しています。つまり、イメージを変えれば、心も変わるということです。

バニック時にゆっくり動くものを心に思い描くなど(一例として、ゆっくり水車がまわっている様子を想像する)すると、そのイメージのスローペースにつれて、心の動きもゆっくりしてきます。

イメージを想像する場合、はっきり心で描けなくても大丈夫です。体の感覚、イメージから感じられる雰囲気などがサポートになります。パニックになりやすい状況を想像して、そのイメージの中でリラックスするようにセラピストがリードするのも、パニック反応を解くトレーニングになります。イメージ療法には、ネガティブな感情反応の条件づけを解くためのさまざまなテクニックがあります。

アドバイス

1. コーヒー、紅茶、チョコレートなどカフェインを含む飲食品は緊張感・不安感を増長する可能性があるので、気をつけて摂取しましょう。

2. 日頃からリラックスできることを実践しましょう。どのようなことが自分の心身をゆるめるか、常に観察するとよいです。

3. 運動をするなど、体を動かし、血行をよくして、ストレスを軽減しておきましょう。
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4. ゆっくりした呼吸をする癖をつけましょう。深呼吸は吐く息を少しずつ、長く吐けるようになると気持ちが落ち着きます。

5. パニック発作が起こっている時は大変つらいものです。しかし、その状態は過ぎ去るものです。コントロールをなくすかのような恐怖感に襲われた時、「この発作は過ぎ去るもの、終わるものである」と思い出し、自分に繰り返し言い聞かせましょう。